the TOWER of IVORY

あなたたちの耳が長いのは、神の代わりに世界の声を聞くため

2019年のKPOP 今年の17+14曲




 一応去年もこういうのを書いているのですが去年の年末なぜか希望に満ちあふれてて胸が痛くなるな、仕事辞める直前だったからかな…よかったら併せて読んでください

towerofivory.hatenablog.com


 
 2週間くらい前からこのエントリに取りかかったんですが、いつもなら近況報告とか最初に書くのですがいつの間にか2万字を超える分量になってしまった…のでさっさと本題に入ります。
 並びはABC順でとくに順位をつけていません





■Baek Yerin(백예린) -Square














 




 
 JYP Entertainment所属時は、15歳で同い年のパク・ジミンと歌うますぎデュオ15&として活動しましたがここ数年はそれぞれソロでのリリースが続き、JYP契約が満了した8月からは自身のインディペンデントレーベルBLUE VYNYLを設立。さっそく12月に発売された『Every Letter I Sent You』はCDにして2枚組みの大作。以前からコンサートではたびたび披露され、音源化が待ち望まれていた""Square" "0310" "Bunny"といったインディーロックと親和性の高いトラックが収録され、JYP在籍時のソロアルバムでも片鱗を見ることができた彼女の音楽志向性を存分に示しています。

 そしてこのアルバムを聴き進めていると「もしかして全部英語?」となります。CD2の2曲目、"Datoom"でようやく韓国語が聞こえてきますが、この曲と"Point"でフィーチャリングのLoopyのラップを除けば他のリリックは全て英語詞。"Square"は早速音源チャートで1位を獲得しましたが、韓国人が歌う英語歌詞の曲が韓国の音楽チャートで1位を獲得したのは史上初めてとのことです。


 "Square"という歌詞は出てこないので何でこのタイトルなんだろうと思ったんですが、スクエアって多分、世間の常識を疑うことなく真っ当に生きてる人たちのこと。イェリンの歌の中に出てくる女の子はそれとは正反対の価値観の持ち主で、相手もきっとそういう感性を備えている子で。必然的に惹かれあうのですが、彼女の繊細さゆえ今にも壊れてしまいそうな関係。イェリンは、結局は自分を愛してはくれないだろう相手にちゃんと私を見つけてよ、と訴えかける強さを持っています。























 今年は1曲ごとに、関連トラックを紹介していきます。
 まずはウェブドラマ『A-TEEN2』のサントラで、イェリンが挿入曲を歌った"Lean On Me(스며들기 좋은 오늘) "を挙げます。メインの配役をJYP Entertainment所属の女優シン・イェウンDSP Media所属の6人組グループAPRILのイ・ナウンが務め、そのほかにもよく分からない役どころでSEVENTEENNCT DREAM、Stray Kids、IZ*ONEなど錚々たるアイドルが登場することで人気(?)を博したウェブドラマの2作目。ナウン演じる優等生キム・ハナのテーマ曲とも言える、ドリーミーな佳曲です。





■Crush(크러쉬) -With You





 









 




  長年在籍していた実力派揃いのレーベルAmoeba Cultureから、PSY率いるP Nationへ移籍したR&Bシンガー・プロデューサー。8月にリリースした移籍第1弾の『나빠(NAPPA)』は、LA録音のダウントゥアースな良作EP。Bサイド曲のミディアム・ソウル ”Looking 4”には、日本在住経験がありアンダーグラウンドのヒップホップレーベルDown North Camp(中心となっていたクルーMONJUの脱退により12月に解散)界隈との仕事でも知られる、Devin Morrisonらも参加しています。

 そして延期もありながら12月に入って発表された2ndフルアルバム、『From Midnight to Sunrise』は、DEAN、ZION.TといったCrushの盟友たちが彩る珠玉のミディアム・ナンバーのみならず、Band WonderlustのバッキングによるコンテンポラリーR&B~ジャズ・フュージョンへの接近、とアフリカ系アメリカ人音楽への幅広いアプローチがなされた内容となっています。
 全盛期のMint Conditionを思わせるようなラグジュアリーなトラックと歌唱に胸を打たれるタイトル曲"With You"は、それに先立って11月22日に公開されています。俳優のイ・ジェフンイ・ジュヨン(元Afterschool)が出演する、不思議な展開のストーリーのMVとなっています。






 








 街中で言い合ったのち立ち去っていくジュヨンと、憮然としながら反対方向へ歩き出すジェフン。と思いきや十数秒後には、彼は腕を組んできた別の女性と親しげに話しています。次のシーンでは手をつなぎながらも女性がなぜか後ろ向きに歩き出し、手を振る別の男性が待つカフェへ吸い込まれるように戻っていきます。
  こんな調子で入れ替わり立ち替わり交錯していく男女の群像。時間軸がどうなっているのか、何が現実なのかもまだここでは判らないままです。




 









 夜中のバスに揺られているジュヨンと、後ろ歩きでジュヨンの隣に腰掛け、なれなれしくその手を握る男性のシーン。彼の手を振りほどくと、やはり後ろ歩きでバスを降りたジュヨンは今度はまっすぐに雨の中を歩き出し、傘を差す。







 しかし、傘が閉じられると再び後ろ歩きで戻っていく彼女。帰りついた先は、ジェフンが待つ暖かな灯りの部屋。ベッドに寝そべり安心しきった表情のジェフンを、後ろから抱きしめるジュヨン。冒頭のシーンはなんだったんだ…曲が終わろうとするなか、ジェフンは不自然な動きで起き上がり隣を見やったあと、彼女の入ってきたはずのドアの方向…画面の私たちのほうを呆然として見つめ、エンディングとなります。























 
 コメント欄も参考にして何度も動画を見直すと、どうやらこの映像の登場人物は、後ろ向きに歩いているときには終わりを迎えた関係を、前向きに歩いているときには新しいパートナーとの関係を示しているようです。そして、連関した冒頭とエピローグが表しているのはジェフンとジュヨンのパートナーシップの終わりとその予感、ということになるでしょう。

 では、歌詞ではどんなことを歌っているのかといえば、リフレインはこう。


아주 오래 오래 더 오래 오래 오래 오래 오래 with you 



 ずっと長く、もっと長く長く、一緒に。いま目の前のあなたとの関係が百年続きますように、永遠でありますようにと祈る曲なのです。韓国語話者でない人がWith Youの映像だけ見たら、歌詞で歌われていることとは全く逆の、胸の張り裂けるような失恋の歌を歌ってるんだろうなーという感覚を持つことになるはずです。

 ただ、このMVの時間経過は過去から未来へと直線的な進み方をしていません。最初と最後のシーンにつながりがあることで、男女の群像劇全体をひとつの円環として見ることができます。そして、彼らが親しげに絡めていた手の片方を、また別の誰かと何事もなかったかのように触れていくときに妙にこみ上げるものがあります。私たちが誰かを深く愛し、信じ、与え、与えられる経験をし、それを追い求めているときには、歓喜と悲しみが交互に生まれてせめぎ合うことを思い出すから。
 恋愛関係に限らず、人として生まれ他者との関係性の中で生きる限りは、この円環の中でもがき、歓び、絶望し、涙しながら歩くほかなく。"With You"という作品は、そうした儘(まま)ならぬ道のりの途上で永遠を願うことのはかなさを、とても情緒的に表現していたと思います。
 
















 





 2019年リリースの同系統のトラックとしてOVITの"Standstill"を紹介。この人えりかさん(@e_e_li_c_a)のツイートで知って、この曲以外もめちゃくちゃ良いアーバン・メロウEPを出してるのですが調べてもぜんぜん情報が無い。聞き惚れるようなクリスタルボイスなのにこの動画もいまだ170再生…滄海の遺珠という故事がありますがまさしくOVITのことだと思います






ELRIS(엘리스) _ Miss U(그립다)

 
 










 









 2017年デビュー。もともとはドラマ制作をメインとしていた総合事務所、HUNUS Entertainment所属の5人組グループ。

 昨年末の記事ではセンターのキム・ソヒを中心としたスタイリッシュ路線でのカムバックを祈念しましたが、公式から知らされるのはメンバーのVlog動画や歌ってみた踊ってみた系カバーの更新情報ばかり。このまま目立った発表も無いまま解散なのか…?と思っていた11月ついに1年5ヶ月ぶりの新曲として電撃発表されたのが"miss U"でした。
 とはいえデジタルシングルとしてのリリースで音楽番組での活動はなし。新曲に関連したコンテンツもほとんどなく、MVは春先にウランバートルで撮影された映像を使用したもの。プロモーションというには寂しすぎる動きから、一部のSNS上で危惧されていたようにグループとしてのフェアウェル・ソングのような雰囲気も呈していました。

 しかし、オールドファッションなディープ・ソウル風のトラックがこの曲の"追想"というテーマに見事に適合しており、センチメンタルな感情を掻き立てられるのは間違いないです。そして、本作ではラップではなくメインパートの殆どをソヒと二分しているベラが驚くほどのポテンシャルを発揮。あなたと共にした時間が恋しい、と歌った後に胸を衝くような「Oh~」をシャウトする部分は、彼女のヴォーカリストとしての成長を端的に示しています。

 そして気になる今後についてはmiss Uカムバ記念Vliveを見てたらソヒが口を滑らせてペンミがあると暴露、11月末にちゃんと開催されていました。まだまだ良い作品をリリースしていってほしい、ELRISに幸あれ、長く続いて…






















 同系統のヴィンテージ・ソウルスタイルのトラックとして、YG Entertainment所属Lee Hiの"Love is Over"を挙げます。こういう曲ってむしろJYPが得意そうというか餅ゴリがこのトラックで歌ってほしいな…となります





GWSN(공원소녀) - Total Eclipse (Black Out)





















 2018年デビュー、Kiwi Media Group所属の7人組多国籍グループ公園少女。ここまで3作続けてDeep Houseを基調としたダンサブルなタイトル曲路線を堅持しており、その中でパフォーマンス面でのメンバーの役割の変化・成長や、Park in the Nightシリーズを通じてあちこちに見られる類似のフレーズ・振り付けから想起されるテーマの一貫性といった見所があります。

 シリーズの3作目にあたる『Park in the Night pt.3』はBサイド曲も秀作ぞろいです。この"Total Eclipse"はファンソングの位置づけにあたるそうで、公式直々にビハインド動画を編集してアップしたもの。ファンソングといえばステレオタイプなバラードに落ち着きがちな印象がありますが、グループの音楽的な路線が定まっているGWSNならではのDeep Houseトラックで納得感あるなーとなりました。



 




















 今年のヨジャドルのDeep Houseライクなパートを含む曲で印象に残っている、Apinkの”What Are You Doing? (느낌적인 느낌)”を挙げます。この曲の入っているアルバム1月に出たので完全に忘れ去っていたんですが90年代っぽい作りのミッドR&B"안아줘요"や、ソリッドでお洒落なアーバン・ファンク”Enough”など粒揃いで、JBJ95の『Awake』のサウンドが好きな人などにもお勧めかもしれません。




Heize(헤이즈) -Being Freezed(얼고 있어)






 













 Stone Music Entertainment所属。昨年も紹介していますが、女性ラッパーのみのサバイバル番組オンプリ(Unpretty Rapstar)2でのブレイクを転機にむしろ歌手として大成したシンガーソングライター。恋愛の幕切れややりきれない心残りを描く優れた作品群は、オンプリ2出演中の2015年に破局が報じられたラッパーCrusial Starとの恋愛をもとにしているものが多いともされています。

 今年はフルアルバム"She's Fine"にジャケットも秋らしさに溢れたEP”Late Autumn”のほか、IU主演の大ヒットドラマ”Hotel de Luna”のOST参加やBTSシュガのプロデュースによるシングル"We Don't Talk Together"でのスマッシュヒットなど途切れなく活動していた印象。"Late Autumn"にはこの曲のように情感的な、Heize得意のマイナーミディアムR&Bがぎっしり詰まっています。










 







 




 "Late Autumn"に入ってそうなトラック、JOZU -feat.Jeebanoffの”Throw it out(버려)”を挙げます。これは12月18日にリリースされたばかりです。Jeebanoffの、繊細ながらも芯を感じさせるしなやかな高音(たとえばDEANほど線が細すぎない)がとても魅力的。





Hoody(후디) feat.GRAY -Adios(안녕히)





















 JYPのアイドルグループ2PM脱退を余儀なくされた後、ソロとして成功を収めた韓国系アメリカ人パク・ジェボム(Jay Park)が設立したAOMGレーベル所属のシンガー。ジェボムのディケイドを代表するナンバー”All I Wanna Do"や、本作でもフィーチャーしている同事務所のプロデューサーGRAYの"I'm fine"、G Soul(Golden)の”Tequila”など数々のK-R&B名曲に名を連ねているものの、フディ本人は爆売れにはまだまだ手前という位置でしょうか。どんな気分の時に聴こえてきてもすっと入ってくるクールなヴォーカルスタイルですが、いついかなる場所で出てきても存在感があります。


 で上の動画ですが、「ODG」という子役の子たち?俳優の卵たちが出演していろいろアクティビティやリアクションするYoutubeチャンネルがあって、子供たちと対面した歌手やラッパーがパフォーマンスを披露、子供たちがそれにリアクションする…という面白い企画に、フディも出ています。

 披露しているのは、10月25日に発表されたばかり(動画は10月28日アップ)の”Adios”。子供たちは小学生くらいで、年齢相応の反応すんのかな?と思って見ていると歌に反応する表情やおどけて踊って見せるところは役者じみていて感心するし、ときには歌手に対して鋭い質問を投げかけます。
 フディの回では、何人かの子供のうち、体を揺らすでもなくニコニコするでもなくじっと聞き入っていた子が、「どうしてこの歌を作ったんですか?」と質問する。「(何かを作るという)仕事をしていると、どうしようもなくなって、どこか遠くに逃げてしまいたくなる。そういう気持ちをこの歌にしました」と率直に、マジに応えるフディ。そして子供たちに、「あなたたちもどこかに逃げ出したくなっちゃうときってない?」と聞き返すんだけど、「いや」「別にないです」と返されて苦笑、の流れが面白かった。


 実際、心がほんと軽くなっていくようなトラップR&Bで、サビの「なんとなるれ なんとなるれ(私ここからいなくなるね)」の部分を聴きながら退勤しているとき、暗い帰り道で腕を広げて歩いていきたくなります。







프라이머리(Primary) - 'When I fall in love (Feat. Meego, 수란)’ M/V

 


 Adiosと同じように心を羽のように軽くしてくれる曲として、Amoeba Cultureの名プロデューサーPrimaryMeegoSURANを迎えた”When I fall in Love”を挙げます。Primaryは4年前に”Mannequin”というスウィング・ジャズR&Bで後述のラッパー、ビンジノ(Beenzino)とともにSURANを起用しています。その頃よりも深みを増したSURANの声と透明感のあるMeegoのヴォーカルとが、中間の音域で展開していくストリングスとスティールパンの浮き浮きするような音色の上で徐々に交じり合っていくのが素敵です。




ITZY -ICY, TWICE -Feel Special, TWICE -Fake&True

 
 
 

JYP Entertainmentを支え、(多分彼女たちが)稼いだお金で新しい社屋も建て、自ら歌詞を手がけることでアイドルとしての自分たちの思いを歌にし始め、名実共にK-POPアイドルの最高峰にして最先端を走りつづける9人組グループ、TWICE。そして潤沢な資金とノウハウがあれば優れた後進も育ちます。2019年2月、大先輩の元Wonder Girlsユビンヘリムに祝福されながら、デビューショーケースをつつがなく終えたITZY。今のITZYの風格を見るとデビューからまだ1年経たないことが信じられませんが…

 まずはITZYの2つ目のタイトル曲、”ICY”から始めましょう。そもそもデビュー曲の”DALLA DALLA”が所謂ガールクラッシュを標榜し、あどけなさで中和しつつも「きみの基準に私を合わせようとしないで」「私は特別だから YEAH」と、立ちはだかる社会通念や常識的な「大人たち」に対して自立を歌い上げる、ティーンエージャーのエンパワーメントソングでした。
 "ICY"も基本的にこの路線を踏襲し、「うるさい、私は大丈夫」「答えは私が分かるからit's OK(Dance)」(これJYP公式がYoutubeの動画につけてる日本語字幕ですが、パンチライン多すぎない??)と、男性…という明言はないものの、既存の社会構造においてヘゲモニーとなっているホモソーシャルな価値観、それを是とする集団意識にNOを突きつける意気を読み取ることもできる、2019年らしいアンセムとなっています。


 他方でこの曲を、(特に女性にとって)自分らしさを肯定することの称揚あるいは自己肯定感爆上げソングとして捉えることも可能です。KPOPに関する識者のエントリでは、ガールクラッシュという言葉がそのような文脈の中で使われているのも見かけます。


 ここで視点を変えて、臨床心理士信田さよ子先生が9月に書かれていたTwitterの連ツイの一部を参照します。


 

 






 今は自己肯定感の低い自分→しんどくならないために自己肯定感を上げる!という解釈でメンタルのバイオリズムを変えていこうと自分の内部に深く潜っていけば、自分が自分アゲをしていくしかないという袋小路に陥ります。またそれは社会に蔓延した自己責任論とも容易に結びつき、自分を愛することができない自分に負い目を感じていくことにもなる。"DALLA DALLA"や"ICY"の主体は、他人をあてにせず自分1人の世界で地平を爆走しているような危うさも併せ持っています。




















 そこで、TWICEの"Feel Special"に移ります。TWICEというグループがFeel Specialを歌うTWICEに至るまでの包括的な歩みについてはライターの菅原史稀さんが、MVを細部まで読み解き"Feel Special"が伝えようとしている世界と自分の愛し方についてはフォロワーの工場さん(@wnktm)がそれぞれ素晴らしい文章を書かれているので、ここでは詳しく楽曲の内容に立ち入ることはせず進めます。

 最も核心と思われる部分の歌詞(の日本語字幕)を引用します。


”何でもない存在のようでも
 いなくなってもわからない人のようでも
 私を呼ぶあなたの声で 
I feel loved I feel so special”



 Feel Specialしている主体は、特別な誰かの愛に身を浸しているラブ・アディクションの状態にあるわけではありません。そうであれば、通り一遍のラブソングになってしまいます。このバースとMVが意図するところは、自分の中を愛で満たすには豊かな世界と関わっていくしかなく、その対象は人だってモノだってだれかの文章だって自然だって、なんだって不思議じゃない。自分1人だけのイメージの世界で生きていた私が私以外の世界と触れて、その感触を信じきること。そのなかでこそ、自分で歩んで生きていく力が得られると。


 自分が自分らしくあるためには世界との関わりをもち、その差異に気づくことが出発点となりますが、自己肯定感という言葉に捉われて自分らしさを追い求めようとすれば、いつも自らを採点する評定者としての他者のまなざしにおびえることになります。
 「自分の身体が他者からの呼び声で満たされる」(文化人類学者の磯野真穂先生の『ダイエット幻想』)状態、それは偽り(フェイク)の自分を求めることに等しい。




















 そこで、3曲目の"Fake&True"に移ります。10月18日に、日本で発売されるアルバム『&TWICE』の先行MVとして発表されたこの曲は、楽曲としてはFeel Specialと同様2step Garageの要素も備えています(えりかさん(@e_e_li_c_a)のサイゾーウーマン10月号の記事を参照してください)が、内容的にもその姉妹曲と言えそうなものになっています。


”ないものを願えど 結局癒せない渇きを
だけどきっと望むのをやめなければ いつかは
TRUE TRUE TRUE”



 「今の自分を変えたい、認められたい」と願うとき、なんらかの社会的価値観に縛られていたり、認められることや愛されることに心を奪われて本当の思いを見失ったりしている。そんなフェイクの自分を見つめ直す。





 これに加えて、"Fake & True"は他者への過度な意識に苛まれている自分を見つめ、関係性への依存や嗜癖に陥ることなく世界とつながっていくことを教えてくれます。なぜこの項目を3曲まとめて紹介したかというと、この3曲が揃えばティーンエージャーの人生の教科書になるからです…2019年にこんな教科書を手にしている、TWICEとITZYを愛するティーンエイジャーを心から羨ましく思います。





IU(아이유) -Above the Time(시간의 바깥)





















 Fave Entertainment所属、デビュー12年目を迎える韓国の国民的歌手・女優。女優としての活動名は本名のイ・ジウン。11月に『Palette』以来2年ぶりのミニアルバム、『Love Poem』でカムバック。友人ソルリの逝去を受けて順延の後に発表されたタイトル曲に加えて、ダブルリード曲として"Blueming"と"Above the Time”がそれぞれ音楽番組や音源チャートで1位を席巻しました。

 『Love Poem』発売前のアジアツアー中、新作には2011年の"You & I"の続編が収録されることが告知されていました。タイムリープとすれ違いを主題としたロマンス"You &I"で、IUがタイムマシンで移動した先は2019年12月31日。"Above the Time"の冒頭では、その日付が示されたカレンダーが登場します。そして”You & I”と同じ制作陣、歌詞・ストーリーの伏線を丁寧に回収していくMV。詳しくはこちらのブログが参考になります。


 今年の記事では個人的な話ばっかりしますが、Kぽの沼にはまる前の私は10年以上ネトゲの廃人として時間を空費し、いつだかライブハウスでビート研の同期、新間くん(@Shimmakun)に「初期のネトゲ廃人」と紹介されたことがあります。的確…
 そんな私が2013年ころに遊んでいたAIONという韓国産オンラインゲームで、韓国の国民的妹と言われる歌手とのコラボレーション企画があり、そこで偶然IUを知ることになります。おらが村にイ・ジウン様が来たときの画像。
















 その頃、ゲームで知り合った心通じる友人と仲たがいし、その亀裂がもはや修復できないところまで行ってしまっていた時期でした。さっぱり意味のわからない韓国語の歌を聴きながら、この"You & I"のMVのように、時計の針を進められたら時間が全てを解決してくれるのに…と無責任なことを考えていたような気がします。

 そして6年の月日が流れ…"You & I"でKぽを知って、どういう風の吹き回しか2017年の『Palette』をきっかけにKぽのオタクになり、『Love Poem』が出た数日後、その友人から突然の便りが舞い込んできたとき。私が真っ先に言った言葉は「IU新譜出たから聴いてくれ!!!!!!!!!!!!!」でした…IUが繋いだ未来…































 






 IUは今年女優としてもテレビドラマ『ホテル・デ・ルーナ』で高い視聴率を得るなど成功を収めています。このドラマのOSTに参加している歌手Benの7月のカムバック曲、"Thank You for Goodbye"(上記動画)ではOH MY GIRLのジホがMVにて好演しています。Benの歌唱スタイルは余り好きではないのですがすごく引っかかる声で無視できない魅力がありますね。12月にそのジホがIUの"Twenty-Three"をカバーした音源をアップしましたが声が曲にめちゃくちゃ合っていて、ジホ様の才能の片鱗をさまざまな面で見ることができた1年でした。




Lee Bada(이바다) feat.PENOMECO -High(ㅎㅇ)

 
 




  NUPLAY事務所所属、2015年デビューのシンガーソングライター。コンポーザーでありもちろん演奏もできるのですが、何より優れたヴォーカリストです。声の系統としては先述のSURANに近い感触があります。低めの地声も素敵ですが、歌い始めると鼻がかったハスキーな声で自在にさまざまなスタイルを歌いこなします。リズム感もすごくいいしラップをやってもきっと滅茶苦茶かっこいい…
 この動画は"High"のカムバックにあわせて、Dingo Freestyleチャンネルで公開された"Killing Voice"というシリーズ。代表曲をメドレーでおさらいできます。"High"は3曲目に登場します。トラックは「Groovy!Everywhere!」のシグネチャサウンドでお馴染みの2人組、GroovyRoomが手がけています。

 Highのカムバでは遠目に見たら宇宙少女(WJSN)ルダ?と思うほどスタイリングも仕上がっているし、ライブでますます本領を発揮するパフォーマンス巧者でもあり、Heizeのようなスター性を秘めたシンガーだと思います。


























フィーチャリングのPENOMECOに全く触れられなかったので(HighではMVに出てこないし…)、ELO,PENOMECO名義の本当にいいメロディの曲"LOVE"を挙げます、こちらもDingo Freestyleの企画であるDF Liveから。アッシュカラーに毛先に青ハイライトの人がPENOMECOです。K-R&B,HIPHOP界隈には天から与えられたみたいな声のシンガーが死ぬほどひしめいてるの頭おかしいのでは?となるのですが、PENOMECOもそのうちの1人。日本留学時以来の盟友ZICOをはじめDEAN、Crush、millicとのクルーFANXY CHILDにも所属。

 2018年はクルーのZICOやCrushのサポートを受けた自身の名義曲(EPも発売)だけではなく、数々のフィーチャリングで名を馳せるように。今年はZICOの”Another Level”やDynamic Duo”MSG”で桁違いのラップスキルを披露、後者ではディールの現場で1人だけ場違いな感じの風貌でしょっぴかれる怪演も魅せてくれます…意外なところではプロデュース101Season2出身のアイドル歌手、チョン・セウンの”Feeling”にも参加。どの作品に触れても耳目を惹かれる稀有なアーティストです。





이달의 소녀 (LOOΠΔ) "NCT 127 (엔시티 127) - Cherry Bomb" Dance Cover























 BlockBerry Creative所属の12人グループで通称イダレソニョ(今月の少女)。2016年から2018年にかけて1人ずつメンバーを公表・ソロとしてデビューさせ、ユニット活動も挟みながら2018年8月に12人でのデビューが叶いました。公式チャンネルではときおり男性グループのダンスカバー動画を公開しており、今年5月にはNCT127の"Cherry Bomb"のカバーをアップしています。12番目のメンバー、リビア・ヘ(通称ヘジュ)のダンスの強烈な印象に衝撃を受け、しばらくは彼女のコレオやファンカムばかり見続けていた気がします。この動画では最初は左から4番目、最後列にいる特徴的な口元の子です。

 ただ、LOONAにはチェリバムのような曲もコレオもないし今後リリースする可能性も低いため結局この動画に戻ってくるしかなく、2019年の曲ではないしそもそもカバー企画なのですがめちゃくちゃ目に焼きついたで賞としてここで挙げます(Butterflyじゃないんだ…ヘジュの、過不足のない身体表現のなかにあって上昇していく渇望のようなものに惹かれるのですが、くやしいことにそれ以上言語化できるほどの何かにはまだ至っていないので、2020年も100万回くらい見直してみます。






















 2019年に中国のYUEHUA EntertainmentからデビューしたEverglowのサブ活動曲”Moon"は、TLでLOONAの曲よりLOONAっぽい…と話題になっていました。
 椅子使うセクシーなコレオ見るのがぜんぜん得意じゃないのですが、このデビューショーケース見始めた瞬間イロンが大股開きで座っててアンデ!!!!!!となりました、勘弁 そして今見てたら”Rumor”(メンバーのイロンとシヒョンが出演していたProduce48で、シヒョンがセンターを務めた曲)の振りつけのオマージュ入ってるんですね、コレオ作者の心遣い…





■OH MY GIRL(오마이걸) -Guerrilla(게릴라)





















 WM Entertainment所属の7人組グループ。通称おまごる。
  今年8月末から放送されたMnetの番組「Queendom」は、音楽番組1位獲得経験のある6組の女性アーティスト/グループが新曲でクイーンの座を競うサバイバル番組。
 そして、番組内での事前評価からカムバックバトルに至る各ラウンドにおけるパフォーマンスで、常に話題の中心にあり続けたグループはOH MY GIRLだったように思います。それだけ周到な計画と舞台作り、それを具体化する練習を休むまもなく継続し得たこと、今回は事務所ではなくメンバーが主体となってその進行を担ったということも瞠目すべきエピソードです。

 他方で、2019年のOH MY GIRLの(イル活=日本活動も含めた)活動スケジュールの密度は正気の沙汰ではなく、9月にはリハーサル中見るからに体調の優れないジホ様がくずおれるファンカムが出回るに至って抗議の声が上がり、事務所は9月末に予定されていたソウルでの単独コンサートを異例の中止としました。

 この時点で個人的にはQueendomの降板が妥当なんじゃないかと思っていたのですがそうはならず。後知恵から言うならば、Queendomを通してこれだけ素晴らしい舞台を毎回残し、人気も上がり広告の仕事も増え(ゆあたまがCLIOのモデルに抜擢、ビニがウェブドラマ出演予定などなど)、普段あまり関わることのないアイドル達とも友達になって、やっぱり打って出て正解だったじゃないか…ということになるのですが、アイドルという存在を愛するとき、それと向き合う倫理的態度として結局どういう心持ちでいることがふさわしいのか、という正解のない問いに初めてぶつかることになりました。

 いかに事務所がアイドルを通じて素晴らしい舞台や作品を世に送り出していたとしても、彼女達の負担や休息の必要性を省みずスケジュールを組んでいるとしたら?それらの舞台や作品に対価を支払うことで、芸能界の悪しき慣習に無思考に与する消費者になってしまっているのでは?と。また、その無思考はアイドル的な文脈における「消費」というタームにも、一直線に繋がっているのではないか、とも。
 武蔵大学シェークスピア研究者、北村紗衣先生のTEDでの講演を思い出しながらそんなことを考えました。

  




















 北村先生はこの動画の中で、大学で教育に従事する者として「良き市民、良き観客、良き消費者」を育てていくことを持論として述べています。市民的美徳civic virtue、この視点は異国アイドルのオタクをやっていっている我々にも有用なものですが、北村先生はこの3つの視点を同時に並立させるのは難しいこと、多くの場合結局はいずれかを選択しなければいけないことも説きます。どのオタク的美徳(nerdy virtue?)を最も重視するか、あるいはバランスを取りながらオタ活をしていくかはその人次第…だけれど、考え抜いた上での判断が必要。そんなこといちいち考えてらんないでしょって感じだけど、オタク1人1人がどう立ち回るかを考える局面に来ているというか、そうじゃないんだったら暗闇みたいだった2019年を経た意味は?となるんですよね…。


 だいぶおまごるから話が反れましたが、この”Guerrilla”という曲にも少しだけ触れておきます。番組の最終局面、カムバックバトルで新曲として発表されたもので、6チームの音源成績の中では2位、生放送パフォーマンスを経ての最終順位も2位と健闘しました。
 5月の活動曲"다섯 번째 계절(5番目の季節)"と同様、2段階のサビを採用しています。”5番目の季節”と比べてこの曲はよりEDMポップとしての色が強く、ビルドアップ部分(サビ前の盛り上げの部分)→1段階目のサビ→2段階目のサビ…と盛り上げを溜めに溜めたクソ長ビルドアップ(そんな言葉あるのか知らんけど)が、スンヒのロングトーンで大爆発!!!!となる爽快感があります。













 









 歌詞を読んでいるとOH MY GIRLにとっての"다시만난세계 (タシマンナンセゲ)"のような曲だなと思い当たります。タシマンナンセゲは少女時代のデビュー曲で、2016年の梨花女子大学でのデモで学生たちが歌った(上記動画)ことで、プロテストソングとして象徴的な意味を獲得しました。







 





 


 個人的な話で恐縮ですが、私は2年前にKPOPと出会ったことによりトランスジェンダーとしての自分を発見することができ、ジェンダーセクシュアリティの視点で身の周りの物事を見つめることができるようになりました。2018年のOH MY GIRLはヒョジョン、ビニ、アリンの3人ユニットOH MY GIRL BANHANAで"バナナが食べれないサル"という嘘みたいな曲で活動しましたが、あれはまさにマイノリティの自己受容に関するノヴェルティ・ソングでした。また、今年の『OH MY GIRL JAPAN 2nd album』に収録されている"Sixteen"は「2人の勇敢な少女」たちの思い出をノスタルジックに振り返る、ストレートにシスターフッドに言及した珍しい曲です。
 しかし、マイノリティとしてあるがままに心を開いて生きていこうとすると、そこかしこで障害に突き当たります。あなたはこうでしょと社会に押し付けられる性役割や腫れ物扱いするような目線、35年の人生の中で変えようもなく内面化されてきたセクシュアリティに基づく自身の価値観に苦しめられるたび、心を殺されたような気分になります。そんなとき、"Guerrilla"のように隣で手を携えてくれる歌が、この世界で私の心が求めているものにもう一度巡りあうための力を授けてくれる。OH MY GIRLの表現を信じ応援することが、もしかしたら自分を信じ応援することに繋がる。今年もOH MY GIRLが描く煌々とした航跡を、まぶしく見つめていこうと思います。

 











 

 


 "Checkmate"は5月にリリースされたOH MY GIRL初めてのフルアルバム『the Fifth Season』のラストに入っている曲。このアルバムの後半ではミミとユアの活躍が目覚ましく、とくにイントロ直後の2小節を聞いただけで歌唱面でユアの存在感が劇的に大きなものとなっていることが分かります。このグループのパワーヴォーカル担当と言えばその声量ゆえスンヒと相場が決まっていたのですが、パワフルなR&Bソングの歌い手としてはいまやユアに一日の長があるかもしれません。そういえばこの曲の焦らしにつぐ焦らしもクソ長ビルドアップの類に入るのでは?





Park Bom & Choi Hyojung(봄&쩡) -Scarecrow(허수아비)






















 ”Guerrilla”に続き、Queendomからのパフォーマンスを選びました。
 パク・ボムは2016年に解散したYG Entertainmentの4人組グループ2NE1の元メンバーで現在ソロの歌手。チェ・ヒョジョンは前述しましたがWM Entertainment所属の7人組グループ、OH MY GIRLのメインボーカル兼リーダー。著者Chihiro Watanabeの推しアイドルです。
 
 Queendom第5話から第8話にかけて放映され、番組内3つ目の課題として提示されたヴォーカル・パフォーマンス対決ラウンド。各グループの選抜メンバー6人ずつがヴォーカルライン・パフォーマンスラインに分かれ、ヴォーカルラインはペアを組んで自分たちで決めた曲をステージを披露する形に。ペアを組むことになった2人は、ボムの当初からの希望曲でYG Entertainmentの後輩であるイ・ハイの楽曲、"허수아비(ホスアビ、かかし)"を選択します。







 









 2NE1を履修していないのでその時に始めて知りましたが、この曲はYGで2NE1としてデビューする以前の2008年、ソロデビューが予定されていたボムがJYPのパク・ジニョンより送られた出色のバラードで、レコーディングまで終えていたそうです。しかしグループでのデビューとなることが決まったためお蔵入りになり、その後イ・ハイに譲られる形となったということです。







 








 それを歌いたいというボムですが、ことごとくMAMAMOOのファサとのペアを希望するほかの4人を尻目に、もともとバラードが好きだというヒョジョンが相方を務めることになります。


 パフォーマンスの準備の過程は6話から7話にかけて放送されました。その中で、つらい出来事を乗り越えることについて話していたヒョジョンが泣き出す場面があります。(とにかくよく泣いたおまごる達、メンバー達にもVliveで何回もいじられる…)

 番組内のビハインド映像で「1人だと感じるときがとても多く、小さい頃から自分が愛されなかったと思うときに自分を責めてしまう。そんなとき自分を愛そうとしてもできない」と語ります。私はこの回を見ていて、孤独は消せないものということを強く感じました。ヒョジョンは漫画の『キャンディキャンディ』にちなんでキャンディーリーダーと呼ばれ、彼女ほどステージで笑顔を絶やさず踊る人はいないと思っていたのに、そんな人でも舞台を降りればたびたび孤独にさいなまれ、自分を愛せずに居るなんて…実父を早くに失くした彼女の生い立ちのことや、"抱きしめるの"というOH MY GIRLの日本オリジナル曲でヒョジョンが歌う、「抱きしめるの/分かったの/1人じゃないって」というパートのことも思い浮かびました。

 なくならない孤独を抱えている人にどんな言葉をかけるか…私がいるから大丈夫、心配しないで、つらいときはすぐに教えて…その人にとって心の慰め、励ましになったらいいな、という言葉がいくつか思い浮かんできます。でも、彼女が1人になってしまえば厳然と孤独が姿を現すのだから、慰めはその場限りの慰めでしかないとも言えます。

 ボムは、涙ぐんで黙っているヒョジョンに何て言ったかというと、「その感情を歌にしなさい」と。孤独はあんたと共にずっとあるんだから、あんたにとって一番大事な歌を通してそれと共にあれ、と言ったのです。OH MY GIRLをこの1年追ってきて、QueendomもOH MY GIRLの一活動として視聴していたことからこの番組には感情が揺さぶられっぱなしでしたが、ボムとヒョジョンが心を通わしていくこのシーンで、言葉で言い表せないほどの力を貰いました。そして、ボムが2008年にデビュー曲としてこの壮絶な歌に向き合うことなく、10年が経ち2NE1もなき今、1人じゃなく2人でホスアビを歌うことになったのを幸運なことだと思いました。
















 誰も居なくなった草原にひとり立って、過去に思いを馳せるように星を見上げるかかし。こんな歌を1人で歌い続けていたら、こころが壊れてしまう。現に、ステージ本番でボムは最後には嗚咽しながら表情を歪め、歌えなくなってしまいます。







 








 でも、彼女の横には彼女をまなざす1人の友達、ヒョジョンが立っている。
 この歌で、2人で孤独を歌い飛ばそう。
 お互いのことをまなざしながら、私たち、ずっと孤独を抱きしめていましょうね。

























 ボムの元同僚であるCLも、12月にEP『In the Name of Love』でカムバック。16ヶ国語の字幕に加えて手話でもメッセージを伝えようとする”+안해180327+”をはじめ、YGを離れて自由な道を歩き始めた彼女の魂を解き放つような歌声が炸裂していました。2020年は温故知新、2NE1を履修する年になりそうです!





pH-1 feat.Beenzino -BOOL





















  AOMGとは兄弟レーベルに当たるH1gher Music所属の韓国系アメリカ人。ウェブ開発者としてアメリカで働いていた20代後半になってパク・ジェボムに見出され活動の場を韓国に移した、遅咲きのラッパー。2018年にはラッパーのサバイバル番組Show Me the Money777に出演、1次選考で脱落の憂き目を見たものの敗者復活からの本戦→セミファイナル出場と健闘します。番組内で発表した音源ではAOMGのWoo Wonjaeとの"Hate You"やボスのジェボムをフィーチャリングに迎えた"Orange"など印象的なトラックを残し、最終的にBest4に入る活躍で名を挙げました。

 4月にリリースしたフルアルバム『Malibu』は全編Mokyoプロデュースのもと統一感のある暗い、重めのビート上でスキルフルなラップを聴かせていましたが、7月のEP『Summer Episodes』に収録されているのはAlicia Keysの"You Don't Know My Name"の早回しなど、鮮やかな意匠の凝らされた3曲。タイトル曲の"BOOL"では兵役を終えて復帰したばかりの大御所ビンジノを迎え、pH-1らしいレイドバックした雰囲気のフロウを聴かせています。11月の来日イベントでは残念ながらセトリに入っていなかったものの、日本語?を交えながら人柄がうかがい知れる軽妙なトークを披露していました。























 フルアルバムの『Malibu』も本当にいい曲揃いなのですがここではビンジノ繋がりで楽曲を紹介します。



 日本でのOH MY GIRLサイン会でラッパーのミミと話した時、ミミが韓国のラッパーでビンジノが一番好きと言っていたのですが、実際にその後Youtubeチャンネルを開いたミミがビンジノの"Break"をカバーしています。シンプルなロックのトラックでスキルが問われますがリズムキープ抜群で、そもそも3分もミミのラップだけ聴ける曲ってこれが初めてなことに今更気づいて興奮しました。やはりここにはグループ活動では披露しきれていないスキルフルなラッパーとしての姿があるし、そういう意味でも(リリックのテーマ的にも)この曲を選んだのかなと思ったりしました。

 ちなみに本家の”Break”のMVは名うての映像製作チーム、Digipediが務めていますが、ここではミミがMimPDと名乗ってファニーな映像を監修しています。




VERIVERY(베리베리) - From Now(딱 잘라서 말해)





















 映像も作詞作曲も手がける「DIYアイドル」を売り文句とする、Jellyfish Entertainment所属の7人組グループ。2018年10月、プレデビュー曲として発表された”Super Special”は1990年前後に流行したニュージャックスウィングスタイルの突き抜けて明るいトラックで、同事務所のお兄さんグループVIXXとは対照的なカラー。ですがどこか愁いを感じるのはなぜ…と考えていたところ、




















 この、大サビの横移動コレオか?!?!?!という結論に至り、なぜかこの曲のPerformance.Verを観てからべりべりちゃんにハマることに…なんで?


 明けて2019年1月、デビュー曲の”불러줘(ブロジョ)”もニュージャックスウィング、息をつく暇もなく4月にカムバックした”딱 잘라서 말해 (タッチャラソマレ)”もZapp&Rogerみたいなイントロから始まるエレクトロファンク+ニュージャックスウィング。また、アルバムに収録されているBサイド曲もJBのシャウトサンプリングから始まる骨太ファンク"Alright!"(余談ですがこの曲にも横移動コレオがあります)、1990年代のコンテンポラリーR&Bを思わせるソウルバラード"나 집에 가지 않을래(ジベカジアヌレ)"などが脇を固める構成。音楽的には所謂ニュートロ路線ながらもヴィンテージなスタイルから大きく離れることなく、そのアイデンティティを固めたかと思われましたが、7月の”Tag Tag Tag”のMVではダークな世界観を急速に強め、来年1月に控えたカムバック”Face it”ではさらにその歩みを進めるのでは…と戦々恐々となっています。行かないで…でも行くのね…
 
 個人的にも昨年は7月・12月の来日ショーケースにいずれも友人と足を運び、ミンチャンの宝のような地声に目を細めたり、みるみる美しくなられていくケヒョン君のスタイリングに目を細めたり、世界で一番好きな振り付けことSuper Specialの横移動コレオ(他に呼び方ある?)を生で見れて感涙しながら目を細めたり…今年はTag Tag Tagを挟んで新たな姿を見せていくであろうべりべりちゃんたちの向かう先を、細くなりすぎた目の隙間から見届けなければ…

















 まだデビュー1年も経ってないのにツボを突かれる曲が多すぎて一番好きなのを決めるのが本当に難しいですが、全員の節回しを堪能できるという意味で”나 집에 가지 않을래 (ジベカジアヌレ)”を挙げます。ミンチャンの地声…宝よ…てか今見たらミンチャンのセリフのあとケヒョンとヨノ笑っちゃってるね





WJSN(우주소녀) -You Got





















 Starship Entertainmentと中国のYUEHUA Entertainmentの合同企画による13人組グループ宇宙少女。2018年後半からは中国での活動に専念しているミギソニソンソの3人を欠いた10人での活動中ながら”부탁해(プタケ)”で初の音楽番組1位も獲得し、明けて2019年もコンスタントに3枚のアルバムをリリース。

 "You Got"は今年1月にリリースされた『WJ Please』の2曲目に入っている曲。宇宙少女のBサイド曲にはほとんど毎回と言っていいほどこっちをタイトル曲にしないんだ…みたいなキャッチーなトラックが入っていますが”You Got”もそうで、宇宙・魔法学校みたいなファンタジックなコンセプトを掲げるグループにFuture Funkのトラックが合わさったら大正解たたき出す以外なくない?となりました。また、宇宙コンセプトの壮大な世界観を奏でるトラックの上ではしばしば浮きがちだったエクシのラップが、この曲では8バースでも全然足りないくらいで拍の取り方もめちゃくちゃグルーヴィーでカッコいいです。
 この曲は1月のカムバではサブ活動曲ですらなかったのですが、宇宙少女の単独コンサートではコレオありのパフォーマンスが披露されています。



















 WJSNの謎に良すぎるBサイド曲その2は"Luckitty-cat"を挙げます。11月にリリースされた"As You Wish"の2曲目に入っています。”You Got”よりドライブ感を増し、よりクラブミュージックに寄せたElectro Funkでテーマは「猫の恩返し」がモチーフらしい。コンセプトも宇宙少女にめちゃくちゃフィットするのでは…






その他の最終候補


Lim Kim -민족요(ENTRANCE)(with Salon De Cassé, 전주 판소리 합창단)


























punchnello(펀치넬로) _ Blue Hawaii (Feat. Crush, PENOMECO)
























So!YoON!(황소윤) - FNTSY (feat. Jvcki Wai)





















Taeyeon -Better Babe





















ZICO -Actually






















 最後に、ここでは触れられなかった曲も含めて2019年リリース曲(最後の"Timing"のみ2018年12月の曲)でのプレイリストを作ったのでよかったらご利用ください。





今年はいろんな方と邂逅でき、一緒の時間を経(へ)たことが思い出です。
仲良くしてくれたみなさんありがとうございました。来年も邂逅してね!
おしまい!