the TOWER of IVORY

あなたたちの耳が長いのは、神の代わりに世界の声を聞くため

今を約束して(前篇)



 毎週土曜日に新大久保の語学学校に通い、週1回は新宿・渋谷でダンスのレッスンを受けている。
 油断するとすぐにごっちゃになる発音や尊敬語の活用を直されながら、自分の発声に意識を向けて口を動かす。ここの…アイソレーションの後のぱっ て手上げるとこですね、次まにあわなそうだから…簡略しましょうか? という先生の提案に、ちょっとこのままで頑張りたい、です…と答えながらも、ボディイメージと鏡に映ってる自分の動きのギャップにうーん、てなる。ステ振りはできるだけ身体性に。目の前のあれこれに過敏になっているうちに、すべてがあいまいに飽和してしまっていたくたっくたの毎日が少しずつ、違ってきている実感がある。

 こうして自分自身のウィリングネスに沿って生活を再設計していく中で、これまで私の思考や感情の大部分を占めていた、(人間関係を含めての)職場の価値がみるみる比重を失っていく。結果、ひさびさ抑うつの洪水にのまれる。5月~6月にはいくら担当もとうが残業とろうが怖いもんなしだったのに。揺り戻しです。たまんなくなり退職の意向を伝えるものの、具体的なことを考えようにも双極性の波がきてしまった以上身動きもとれないし…という状況の9月10日、韓国のガールズグループfromis_9(プロミスナイン、以下プロミス)が10月にカムバック!との情報が。

 
fromis_9






 


























 カムバック(新曲リリースとそれに伴う音楽番組・バラエティ番組出演やサイン会などの活動の総称)の告知が出たとしても、日程がわかるのはまだまだ先。具体的な日付とともにティーザーやリリースイメージの小出しの発表がつづき、当日に向けて盛り上がりをみせていく…ので、この時点で初めての渡韓を計画するのは無理がある。あるんですけど。8月に思いつきでOH MY GIRLの東京でのショーケースに行った私にはもう分かっていた。ホールなどのコンサートよりも小さな会場でのステージやイベントを通して、アイドルの一挙一動を身近で目の当たりにすることが真のプレシャスモーメントだということを…



OH MY GIRL





















 




 リリースの直後の土日あたりにイベントがあるはず。YoutubeでLAでのプロミスたちの映像をみているうちに「もう韓国いくしかなくない…?」となった私の衝動は止めようもなくなっていた。

 まずは3年前に切れているパスポートの更新と書類の準備に始まり、やることは山積み。プロミスの公式ペンカフェ(ファン向けの告知とかが出る)入会のしかた、音楽番組の観覧方法、空港と市内の交通手段や両替できるスポットの確認、泊まるところ…そもそも海外が久しぶりすぎるので旅行のしおり作って総ざらい、などなど。

 頭を抱えた問題は、ひとつは前述したようにイベントが実際いつ・どのような形で行われるのかが直前にならないとわからないということ。もうひとつはメンバーとのコミュニケーションどうすんの?ってこと。ひとつめに関しては自分ではどうしようもない問題で、結局10月1日になって告知があった。従来プロミスは約束会(指切りしながらメンバーとコミュニケーションをとれるイベント)を行ってきたものの、今回は通常のサイン会になることと、オンラインショップでの応募により抽選100名様ご招待、ということが分かった。なにもできない赤ちゃんなので、ここは素直に現地の代行業者へ依頼。購入する枚数を伝えてお金振り込んで、申し込み完了。当選発表は…渡韓わずか2日前の10月10日!普通こんなもんらしい、精神の修養にいいかもね…。
 ふたつめは、サイン会でどんなこと話すわけ?そもそも韓国語が赤ちゃんなんだけどどうする…ってこと。ネットで調べると、会話文例やポストイットの質問例を親切にものっけてくれてるブログや知恵袋がぽこぽこ見つかる。けど話題をある程度想定して、それを韓国語の文にできたとして伝えられたところで、その返事が来た次は?むりでしょもう正解ないでしょ…となる。そもそもいまの時点で当選するかはわかんない⇒旅先で考えればいっか☆(実際そんな余裕はなかった…)

 10日の当選発表。もはや仕事どころじゃないので定時であがってお風呂入って(身を清めて?)、オンラインショップの発表サイトをのぞくと…いっちばん下の方、外国人とおぼしき10人のなかに…私、い~~~~る~~~~~。舞い上がるってより、なんにも準備が出来ていないことへの不安と緊張で心臓トゥグントゥグンに…旅行の間も半分以上はサイン会のことで頭を悩ませていたから、心からソウルの空気を満喫できてなかったなあ~と思う。


 いきなり話はサイン会当日に飛ぶんだけど、くじで100人の座席を決めて、メンバーの自己紹介があったあと座席順に数人ずつ列を作ってサインをもらっていく形で進行してった。この旅行で最大の困難が、ここで訪れた。
 私たち参加者はサインをしてもらうCDの各ページに、自分の名前(表記はハングルか日本語かアルファベットかで最初に選択。ハングルにした)と、あらかじめ用意したポストイットに、してほしいサインの感じの要望とか質問したいこととかを書いて貼っつけて、メンバーの所へもっていく。
この、要望・質問というやつを私は完全に勘違いしていて。まずはOKな例を挙げるんだけど。

・サインの要望:スペシャルかわいいサインしてください!⇒OK
・質問    :いま一番したいこと教えてください!
        ①なになに②なぬなぬ③その他(記入式)、とか ⇒OK

  
 もしくはYES/NOで答えられるやつ。ようするに、メンバーがその場ですぐに答えられる&対応できるような状態にしてある要望・質問であればOK、てことなんだと思う。
 じゃあだめなやつの例を挙げます…。私がメンバーの1人、チャン・ギュリに書いてもらおうと思ってたポストイット。彼女は8月までPRODUCE48という日韓共同のサバイバル番組に参加していたので、日本にかかわる質問がいいと思った…

 ・好きな日本語のことばは何ですか?⇒xxx


 ビッビーーーーー!!そらIUもイエローカード出すわ。多忙なスケジュールが始まった中で、100人分のサインしながら100人とコミュニケーションとって、脳みそも表情筋も気持ちの上でもフル回転で仕事してんのよ~~お相手は!負担を考えてよ、少しでも相手を思いやる気持ちあったら想像つくやつよ…「そういうとこ」ってまた言われちゃう。いやーもちろんスタッフがポストイット指してなんかいってたから説明はあったんだよねきっと…韓国語を理解できない状態でサイン会に参加するリスクはこういうとこにあるんですね。

 というわけで、苦労?して書いていったポストイットは1枚残してすべてひっぺがされの憂き目に。それにより、ポストイットみてもらいながら会話の糸口が作れる、とふんでいた目論見も水の泡!ほぼほぼまーっしろな頭で、もう時間ないっしょ…と少し迷惑そうなスタッフに英語で食いつき、どういう内容だったらよかった?!あといまの内容がダメなわけじゃないよね、書いてたようなことはあそこでメンバーと話してもいいよね?!と聞くとネ!オケ!の返事がもらえたので、なんとか落ち着きを取り戻せた。でもちょっと前までの私だったら、そんままなんも聞けないで屈辱~…と思いながら状況を受け入れてたと思うので頑張ったよ…。そして持ちうる限りの武器、発音からもうあやしい喃語レベルの韓国語と、通じなかったとき用の英語と、それもだめだったときのじゃぱにず愛嬌!とで、もうほぼ身一つでプロミスたちとの初対面に臨んだのでした…。



(後篇につづく?)





*次回予告…?

 

 

9月29日に誕生日を迎えたばかりのソン・ハヨン。私は無事ソンムル(プレゼント)を渡せるのか…?